その施策にシナリオはありますか?

事業会社でデザインの仕事をしていると、日々様々な施策の依頼が来ます。

中長期先を見据えた施策や短期の売上向上の施策。大半はこのどちらかではあるのですが、いわゆる数ヶ月先のローンチを見込んだ施策は概ね前者に属し、1週間以内にとか遅くても半月後みたいなものは、確実に後者に属します。

前者の中長期先を見据えた施策は、何かしらのサービスリリースや、大型改善などがあり、設計フェーズにもじっくり時間をかけます。当然、ペルソナを作り、ユーザー像を洗い出し、ユーザー行動を考え、コンバージョンまでの流れを考えて行く部分をデザインに携わる人間が考えます。前提として、その施策があたえる市場へのインパクトや会社の売上、販売方法やサイトへ呼び込むための施策まで全てをシナリオ化し、そこに向けて動きます。シナリオにも個々の思い込みが入らないようにしっかり精査し、プロジェクトメンバーで詰めていきます。そういう詰めを重ねることで、デザインを行う際にはより具体的なデザイン制作が素早く行えるようになります。

一方で、短期の売上向上施策はどうかというと、ある程度内容が決まった時点で、ランディングページを作りたい、DMを発送したいという形で我々に落ちてくることがほとんどです。サービスや施策の内容を聞き、作るという行為だけで見れば、ほぼそれで作ることも可能です。しかし、ほとんどの短期施策の場合に抜け落ちているのが一つあります。

私は、こういうふうな物を作って欲しいという要求に対しては、必ずこう返します。

「その施策のストーリーを教えて下さい。」

この瞬間、依頼側の話のペースが極端に落ちます。どんなお客さまが、どういう心理を持ってやってきて、コンバージョンされるのかが見えていないのですね。そしてさらに、こう言います。

「その施策の全体のシナリオを教えて下さい。」

同じく言葉に詰まります。お客さまはもとより、会社側での動きがきちっとみえているのか、考えられているのか、実はこれはとても重要です。
先述の中長期施策は、シナリオを自分たち自らがヒアリングの上興し、そしてブラッシュアップしていきますが、短期的な施策ではそこに割く時間があまりありません。ところが、施策のオーナーは、これをやれば絶対に売れると自信をもって依頼をしてきます。

Webや紙といったメディアを使う理由、それぞれの特性を考えた最適なアウトプットを作ることはもちろん我々の仕事ではありますが、それを販売方、営業方はどうやって使いたいのかが明確になっていなければ、最適なアウトプットを作ることができません。

短期的施策は時間が勝負です。それぞれの部署がそれぞれ得意なところに最大の力を注ぐことが何よりも重要です。商品やサービスの販売、営業を考えるのは当然その立場に居るものであり、その方針に基づいて、どういう形でお客さまとコミュニケーションを取り、コンバージョンしていただくのかを考えるのがデザインの仕事。短い時間で結果を出すにはここをきちっと明確にしておかないと、結果的にデザインが決まらない、とりあえず公開・発送、結果が出ないという負のスパイラルに陥ります。

閑話休題。最近、というかちょくちょくですが、「クライアントに何度も修正をくらわない10の方法」みたいなことがBlogのエントリーであがってきます。それをありがたく「いいね!」する気にはなれず、どちらかというとガッカリした気分で事の成り行きを生暖かく見守っているのですが、実は今回のエントリーに合致する部分ってすごくあると思っています。

こんな風な雰囲気にして欲しいと好みのサイトを挙げてもらうとか、どこを大きくしたいのか具体的に聞くとか、そんな話は実はどうでも良いと思っています。というか、そのあたりこそがデザインをする人間のする仕事。クライアントに考えてもらうことの方が土台無理な話なんです。それよりも大事なのは、その案件が発生した経緯、どういうシナリオでクライアントがお客さまとコミュニケーションをしたいのかをとことん聞くことに尽きるのです。それが抜け落ちてクライアントからこうしたい、ああしたいといったことをまとめて作っていては、思うようなものが出来ないのは当然のこと。クライアントが言ってくれないといのではなく、クライアントから聞き出さなければならないのです。そのプロジェクトの真意を。それを聞き出すことが出来なければ、納得のいく物は当然出来ません。クライアント自体が伝えないという問題もありますが、実はクライアントは言いたくてしようが無いのです。しかし、本当に伝えて良いのかという迷いもあります。それはお互いの信頼関係が成りなっていないから。でも、受ける側が真剣にクライアントのビジネスに興味を示し、共感を見せてくれれば、自ずと話したくなります。

実際にお仕事をお願いするとき、自分たちのビジネスに興味を持っていただいてるかどうかは、最初の話の時に話をしながら見極めています。単なる制作の仕事を受けに来ているのか、もっと上の所で一緒に仕事をしたいと思ってもらっているのか。

さて、話を戻しつつ、締めに向かいます(笑)。

実は、販売方や営業方のような施策を考えている人たちは、その施策を考えている段階では、大抵はストーリーやシナリオは見えていたりするものだったりもします。しかし、依頼をする段階になると、より具体的な内容に踏み込んで、前提となる部分がまったく共有されなくなるわけです。これで進んでいくプロジェクトは、もちろん結果が見えてきますよね?

面白い話があります。シナリオを教えて欲しい、ストーリーを作ってきて欲しいと言ってから、すぐに出てくるときと、1週間かけて出てくるときの精度では、実はすぐに出てくるときの方が高かったりします。当然、考えていたからでも有り、さらにやはり絶対に売りたいという思いが乗っているからだともいえます。逆にそれらを出してもらうのに何日もかかっている様な際には、最初の依頼の時と比べてだいぶトーンダウンしてくることが大半です。こうだっと思った思い込みが、時間を経て落ち着いてきてあらためて施策の意味を考えてくれるのです。そこまで急ぐものでは無い、段階を経てメディアを使い分けよう、そういう方向になってきます。

企業にとって、デザインされたアウトプットというのは、お客さまとコミュニケーションを取るための重要なもの。お客さまにどうあってほしいのかはもちろんのこと、自分たちはメディアを介してどうコミュニケーションを取りたいのかを一緒に考えなければならないのです。

今受けている施策にシナリオはありますか?

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